これから不動産を売却する売主様にとって、「売主の契約不適合責任」は気になる話題ではないでしょうか?今回は実際のお取引で発見された「地中埋設物」の事例とどのように解決したのかをご紹介します。これから不動産を売却する売主様やまさに今トラブルを抱えているという売主様の参考になると幸いです。
土地の契約不適合責任で問題になることの多い地中埋設物とは
土地の契約不適合責任で問題になることが多いのは地中埋設物です。地面の中は、実際に見ることができないので簡単には発見できません。引渡しが終わった後に、買主様が工事着手したら地中埋設物が出てきたということもあるため、トラブルになりやすい問題です。地中埋設物の例としては、以下のようなものがあります。
- 廃材(解体時等のガラ)
- 過去の建物の基礎が残っていた
- 地盤改良の杭
- 擁壁等の構造物 など
過去の土地利用の状況からリスクがある土地であることが予想される場合等は事前に調査をする等も考えられますが、売主様も全く知らなかった場合は、やっかいです。
実際にあった地中埋設物
実例1 構造物の例
まずご紹介するのは、地中から構造物が出てきた例です。過去の造成時に設置された擁壁等が、そのまま埋まっている場合というケースです。その地域での不動産売買実績の多い担当者であれば、このエリアは可能性があるなと予測できたり、行政の資料から怪しいなと予測できる場合もあります。ただ、ほとんどの場合は発見されるまで売主様も知らなかったというケースが多いでしょう。構造物の厄介なところは、撤去費用が高額になりやすい、又は撤去が不可能もしくは撤去することにリスクがあるという場合があることです。この点は、慎重に検討して対応を考えなくてはいけません。仲介に入っている不動産会社さんの力量が問われます。売主様も買主様もご自身にかかわる重要なことですのでま、不動産会社さんにまかせっきりではなく、しっかりご自身で理解したうえでお話しを進めてくださいね。
これは、実際に地中から出てきた擁壁です。境界ラインより内側に設置されていました。この擁壁自体は、売主の解体作業中に発見されたため新たに業者を手配する必要もなく、物理的にも撤去可能で、費用的にも売主様の許容範囲の費用での撤去が可能でした。ただし、今回は撤去せずに残すという選択肢を選びました。今回の事例のポイントは、以下です。
【契約内容】
・売主の契約不適合責任は、引渡し後3ヶ月間。
・売主による解体更地渡し。
【この対応を選んだ理由】
・擁壁が近隣の敷地の地中にも続いている可能性が高く、撤去による隣接地への影響が考えられたため。
・擁壁を避ける形で今回の買主様の建築計画を立てることができるため。
【解決策】
・将来地中埋設物の存在が分からなくならないように、写真などを付けた覚書を作成し、売主様・買主様・仲介会社にて記名押印を行い各自保管することにした。
・撤去する場合の見積りをとり、撤去する場合にかかる撤去費用の一部(実際には撤去しないので、割合は仲介会社を通して売主様と買主様の協議で決めました)を買主様に支払い売主様の責任を簡潔させた。
今回は、売主様での解体更地渡しかつ契約不適合責任3ヶ月が附帯していたため、売主様の仲介会社、弊社(買主様の仲介会社)、買主様の依頼した建築会社、解体業者にて現場の検証や将来的なリスク、費用面の問題、売主様の責任の範囲等を検討し、方向性を決めたうえで、買主様にも現地確認をしていただき、スムーズにお話しがまとまりました。大切なのは、「売主様の責任を簡潔させること」「買主様の建築計画に支障が出ない解決策を選ぶこと」「何十年先の未来に買主様がこの土地を売却することになった際に地中埋設物の存在が忘れ去られないようにすること」です。このポイントをおさえてうえで、今回は無事にお取引のスケジュールが遅れることもなく完了することができました。
事例2 建築廃材の例
次にご紹介するのは、地中から建築廃材が出てきた例です。地中埋設物というとこれがイメージしやすいのではないかと思います。建築廃材の場合、必ず埋めた人物がいるはずなので、売主様が把握されている場合もあります。その場合は、隠さずにきちんと契約前にそのリスクを伝えましょう。契約は信頼関係が何より大切です。事前にきちんと伝えておけばトラブルにはなりません。また、買主様が価格の交渉をする際に、契約不適合責任なしで良いので値下げしてくださいというケースも良くありますが、その際は、万が一、地中埋設物が発見された場合の撤去費用を考慮してもメリットのある値下げ交渉なのかということをよく検討して交渉するようにしてくださいね。
これは、古家付土地の解体現場にて実際に出てきた建築廃材です。これはごく一部で、基礎の下から掘れば掘るほど大量に出てきました。基礎の部分に割栗石という小さめの石が敷き詰められていることもありますが、これらは、その下から出てきており、今回の建物以前に会った建物等を解体した際に出てきたコンクリートガラなどを基礎の下に埋めて廃棄したことが予想されます。今回は、売主様の契約不適合責任が面積であったこと、また相続物件で売主様も知らなかった可能性が高いことなどから買主様の費用にて撤去を行いました。
【契約内容】
・売主の契約不適合責任は免責。(面積と引換えに値下げあり)
・古家付土地の売買で、解体は買主にて実施。
【この対応を選んだ理由】
・売主の契約不適合責任は免責という条件で値下げを行っての契約であったため。
・売主の意図的な隠ぺいの可能性が低いため。
【解決策】
・買主様の建築計画に支障がない範囲を検討し、地中埋設物の撤去を実施した。
今回は、売主様の契約不適合責任が免責であったため買主様の費用負担で解決することが原則です。買主様は地中埋設物のリスクも検討したうえで、契約不適合責任免責と引換えに価格交渉を行っており、また、売主様が地中埋設物の存在を知らなくても違和感がない取引でしたので、トラブルになることもなく買主様の費用負担で撤去を行いました。なお、売主様が意図的に隠ぺいしていた場合は、売主様に責任を問うこともできますがそれを証明することは非常に困難です。現実的にはできないと考えていた方がリスク管理としては良いでしょう。地中埋設物のリスクが予想される場合は、契約時点で契約不適合責任を附帯するようにしましょう。
トラブルにならないために
いかがでしたか?不動産売買契約は、金額も大きく、些細なことでも対応を間違えるとトラブルに発展してしまいます。売主様には大切な資産を手放すという人生の中での大きなイベントですし、買主様にとっては、これからそこで新しい生活が始まっていくというワクワクする楽しい思い出になるイベントです。トラブルなく、気持ちよく笑顔でお取引を完了したいというのが、不動産売買に携わる私の一番の願いです。トラブルにならないためには、売主様、買主様、不動産会社等、取引に携わる人々の間に信頼関係を築くこと、問題が発生した場合に自己の権利ばかりを主張するのではなく、お互いに歩み寄って解決策を考えることが大切です。私たち仲介会社はその中で指揮を執る大切な役割を担っています。不動産売買をご依頼の際は、信頼できる担当者さんにお願いしてくださいね(^^♪