今回は、ちょっと細かいお話し、権利能力・意思能力・行為能力の3つについてお話しします。
権利能力・意思能力・行為能力とは
権利能力
「権利能力」とは、法律上の権利・義務の主体となることのできる能力のことを言います。
人は、出生によってこの「権利能力」を持ちます。ちょっと難しいですね。
例えば、あなたがお店でアイスを買うとします。大げさですが、お店とあなたでアイスを買うという契約をするとイメージしてください。あなたは、アイスを自分のものにする権利を得ますが、その代わり、アイスの代金を支払うという義務を負います。この権利を取得したり、義務を負ったりすることができる能力(権利義務の主体となれる)が権利能力です。
ちなみに、この権利能力は、外国人や法人にも認められます。胎児については、権利能力は認められないのが原則ですが、例外的に「損害賠償請求」「相続」「遺贈」については、生まれてきたら、胎児だった時に遡って「権利能力」が認められます。
第三条 私権の享有は、出生に始まる。
2 外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。
(法人の能力)
第三十四条 法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。
(損害賠償請求権に関する胎児の権利能力)
第七百二十一条 胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。
(相続に関する胎児の権利能力)
第八百八十六条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
※民法886条の規定は、遺贈の場合の受遺者について準用されます。(民法965条)
意思能力
「意思能力」とは、自分の行動によって、どのような結果になるのかを認識することができ、その認識に基づいて自分の意思を決定することのできる能力です。
先ほどのアイスクリーム屋さんの例で説明すると、アイスクリームを買うことによってアイスクリームが手に入ること、その代わりに300円を支払わないといけなくなることを認識した上で、アイスを買うか買わないかを判断できると言うことです。
意思能力は、個々の行為者ごとに、その取引の難易度や重大性によって判断されますので、明確な基準はないのですが、一般的に10歳くらいで意思能力を備えると言われています。意思能力がないとされる者の例としては、10歳未満の幼い子供、泥酔している人、重い精神病の人や認知症の人があげられます。この「意思能力」を有しない人が行った法律行為は、無効となります。
第三条の二 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
行為能力
「行為能力」とは、自分一人で有効に契約などの法律行為ができる能力を言います。この「行為能力」の前提には、先ほどご説明した「意思能力」があります。基本的には、「意思能力」がある人は「行為能力」があると考えられます。先ほどのアイスクリーム屋さんを例にお話ししたいところですが、ここではアイスを車に変えて解説します。
例えば、300万円で車が売られているとします。車を手に入れる(権利を得る)ためには、300万円を支払わなければいけない(義務を負う)ということを認識して車を買おうと判断します。ここまでは、先ほどの「意思能力」のお話です。そしてここから、車を買うために、車屋さんに行って、「車を買います」と意思表示をします。この意思表示が、法律行為にあたります。車を買うための契約をするということです。
5歳の子供が一人で車屋さんに行って、300万円の車を買います!と言っても契約できませんよね。1人で有効に法律行為をするためには、先ほどご説明した「意思能力」と「行為能力」のどちらもが必要です。正確には、「意思能力」が十分でない場合は、その人を守るために、行為能力を制限しようというのが民法の考え方です。
「行為能力」を制限された人を「制限行為能力者」と言います。この「制限行為能力者」には、「未成年者」「成年被後見人」 「被保佐人」 「被補助人」の4つがあります。この制限行為能力者については、別の回で詳しくご説明したいと思います。
今回は、権利能力・意思能力・行為能力について、噛み砕いて解説しました。これを機に理解を深めてくださいね。