ご家族の方が亡くなり相続の手続きに取り掛かるためには、まず、亡くなった方の相続人が誰なのかを確定することが必要になります。一見、相続人が誰かなんて、わざわざ確認しなくてもわかるよと思ってしまいそうですが、実はご家族が把握されていない離婚歴があったり、お子さんがいらっしゃったりということがある場合もあります。これを知らずに、相続の話し合い、つまり遺産分割協議を進めても、後々やり直しになってしまうため、まずは、相続人を確定させるという作業が大切になってきます。この相続人を確定するためには、亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍を集めて、家族関係をたどるという作業が必要となります。そこで、今回は、この「亡くなったご家族の生まれてから亡くなるまでの戸籍を集める方法」についてご紹介したいと思います。
なぜ出生から死亡までの戸籍が必要なのか
戸籍は、婚姻や転籍、戸籍の改製などがあると、新しい戸籍が作られます。新しい戸籍が作成されると、前の戸籍には載っていた情報が記載されないことがあります。例えば、元々の親世帯の戸籍に、子として記載されていた人物が結婚をしてその戸籍を抜けていた場合、元々の親の戸籍が改製や転籍によって新しく作られた場合にはすでに抜けている子の記載はされないということになります。このようなことが、起こっているため、亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍を取らないと、相続人が誰なのか判断できないということになります。
令和6年3月1日スタート「広域交付制度」について
本編に入る前に、令和6年3月1日よりスタートする、「広域交付制度」について触れておきます。簡単にご説明すると、この制度は、本籍地の役場ではない最寄りの市区町村役場の窓口でも、戸籍謄本が取得できるようになるという制度です。取得できる戸籍は、ご自身のものだけではなく、夫や妻といった配偶者、父母、祖父母といった直系尊属、子孫といった直系卑属の戸籍も請求することができますので、相続手続きの際の戸籍収集の際にも活用することができます。ただし、兄弟姉妹の戸籍は取得できない点とコンピュータ化されていない一部の戸籍は取得できない点に注意が必要です。今回は、従来の方法で戸籍を収集する方法について詳しく解説していきます。
戸籍を集めるために必要な情報
戸籍の収集をスムーズにするために、以下の情報を確認しておきましょう。
- 亡くなった方の氏名
- 亡くなった方の最後の住所地
- 亡くなった方の最後の本籍地(戸籍)
- 亡くなった方の生年月日
- 戸籍の筆頭者
- 戸籍の筆頭者の生年月日
亡くなった方の、氏名や生年月日については問題ないかと思いますが、亡くなった方の最後の本籍地がわからないということはあるかと思います。その場合は、まず、亡くなった方の最後の住所地にて「本籍地入りの住民票の除票」を取得してください。住民票除票で、亡くなった方の最後の本籍地が確認できたら、そこから戸籍をたどっていくことになります。では、具体的に、住民票除票や戸籍の請求方法を見ていきましょう。
具体的な請求方法
では、弊社の事務所がある福岡県宗像市の書式を例に郵送請求の方法を見ていきましょう。どの市町村も大きく変わらないと思いますので、他の市町村の方も参考にしてください。なお、窓口にて取得する場合には、役場の方が教えてくれると思いますし、内容としては大きく変わらないので、今回は郵送請求の書式でご説明します。
まずは、請求に必要なものを確認します。
1. 郵送交付請求書
2. 身分証明書
3. 定額小為替
4. 返送用封筒
聞きなれないものもありますが、1つずつ見ていきます。
郵送交付請求書
1つ目の郵送交付請求書は、各市町村のホームページよりダウンロードして記載します。呼び名や書式は、市町村によって異なる場合があります。
宗像市の書式は、記載の方法を右側に詳しく書いてくれているので親切ですね。
まずは、請求日と請求者であるあなたの情報を記入します。自署の場合、宗像市は押印不要です。
筆頭者との関係が、少し分かりにくいですが、ここは亡くなった方ではなく、戸籍の筆頭者との関係を記載しますのでご注意ください。
次に、取得したい戸籍の情報を記載します。具体的には、本籍の欄には「亡くなった方の最後の本籍」を記載し、筆頭者は亡くなった方の最後の戸籍の筆頭者を記載します。相続人の調査の場合は、戸籍の謄本を取得しますので「必要な人」の欄は記載しなくても良いのですが、亡くなった方を記載しておいた方がわかりやすいでしょう。
次に、必要な書類の欄ですが、ここは現時点で何が取得できるのかがわかりません。そのため空欄のままで構いません。
その代わりに、備考欄に、「〇〇(亡くなった方の名前)の出生から死亡までの戸籍すべてが各1部ずつ必要」といったように、誰が記載された戸籍を集めいているのかと、必要な部数を記載しておきます。請求事由は、「遺産分割協議に際し、相続人を確定するため」などと記載しておけば良いでしょう。
身分証明書
郵送で戸籍を請求する際には、身分証明書のコピーの同封が必要となります。身分証明書として認められるものは、各役場のホームページをご確認ください。
運転免許証やマイナンバーカードは、1つだけで身分証として事足りますが、健康保険証はそれだけでは認められず、健康保険証と年金手帳のように2つ用意しなくてはいけないという場合があります。
定額小為替
戸籍の交付手数料は、定額小為替というもので支払います。定額小為替は、郵便局で購入することができます。
定額小為替証書は、50円、100円、150円、200円、250円、300円、350円、400円、450円、500円、750円、1000円の12種類がありますので、送金額に応じて、これらを組み合わせて購入します。1枚につき200円の手数料がかかりますので、なるべく少ない枚数での組み合わせになるように購入しましょう。
なお、郵送請求する時点では、金額が分かりませんので、多めに入れて送るか、先に請求書を送り、いくら分必要かを役場に電話で教えてもらい、追って郵送する方法をとります。多めに送った場合、残額は、請求した戸籍とともに戻ってきますので、郵便局に持参して、換金をしてください。払い戻しを受ける際には、印鑑と身分証明書も持参しましょう。
返送用封筒
戸籍を返送してもらうための封筒には、切手を貼り、自分宛の宛先を記入してください。
普通郵便でも構いませんが、通数が多くなった場合は、郵便料金が不足する場合もありますので、レターパックの利用がおすすめです。レターパックであれば追跡もできるので安心です。郵便受けの投函で良い場合は、青のレターパック、対面で受け取りたい場合は赤のレターパックを利用しましょう。
まとめ
今回は、戸籍の具体的な請求方法をご紹介しました。今回は、戸籍と一言にまとめてお話ししましたが、戸籍には、「戸籍」「除籍」「改製原戸籍」などの種類があります。今回の請求にあたっては、特にこれらの違いが分からなくても請求できるため、説明は省きましたが別の機会で戸籍の種類についてもご説明できればとお思います。
なお、今回は郵送請求の方法について解説しましたが、多くの方は一箇所の市町村で、出生から死亡までのすべての戸籍が揃うことはありませんので、最後の本籍からたどって従前の戸籍のある市町村に請求をするという作業を繰り返すことになります。相続人の特定は、なかなか大変な作業ですね。