事業用定期借地って何?

 事業用定期借地とは、特定の事業を行うために土地を一定期間借りる契約のことを指します。この契約は、借地借家法に基づいており、通常の借地契約とは異なり、契約期間が定められており、期間満了後には土地を返還する必要があります。また、事業用定期借地権の設定は、公正証書によって行う必要がある点にも注意が必要です。今回は、そんな事業用借地権の概要について解説していきます。

事業用定期借地権とは

 事業用定期借地権とは、その名の通り、事業用の建物の所有を目的とした定期借地権です。(借地借家法23条)ビジネス利用に限定されていますので、居住用の建物は認められません。

 アパートを建てて収益を得るのも事業じゃないの?と感じるかもしれませんが、たとえ収益物件の所有が目的でも、居住用の建物はNGです。居住用ではなく、事業用であればそれ以外の制限はなく、様々な事業目的の建物を建てることができます。

事業用定期借地権と普通の借地権の違い

まず、定期借地権と普通の借地権の違いは、大きく3つです。

  • 定期借地権の場合、契約の更新がない
  • 定期借地権の場合、建物の築造による存続期間の延長がない
  • 定期借地権の場合、地主に対する建物買取請求権がない

 上記の3つの権利は、借地権者を保護するために普通の借地権の場合には認められているものです。あまり詳しく解説しても難しくなるので、更新も延長もないのが定期借地権と思ってください。

 建物買取請求権について少し触れておくと、普通借地権の場合、地主の都合で契約の更新を拒む場合、借地権者は、「それなら建てた建物を買い取ってくれ!」と請求することができ、地主は建物の時価や立地の利益を考慮した価格で建物を買い取らなくてはなりません。一方、定期借地では、契約期間の満了により借地権は消滅しますので、地主は建物を買い取る必要はありませんし、借地権者もそれを求めることはできません。

 さらにもっと定期借地権を分解して、事業用定期借地権と一般定期借地権の違いも見ていきましょう。ここは、事業用定期借地権の重要なポイントです。

  • 事業用定期借地権は、借地上の建物が事業用に限られる
  • 事業用定期借地権の存続期間は、10年以上50年未満
  • 事業用定期借地権の場合、公正証書で契約しなければならない

 借地上の建物が、事業用に限られる点は、問題ないと思いますので、存続期間と公正証書について見ていきましょう。

事業用定期借地権の存続期間について

 事業用定期借地権の存続期間は、2通りあります。

  • 30年以上50年未満の契約期間(1項事業用定期借地)
  • 10年以上30年未満の契約期間(2項事業用定期借地)

 この2パターンの違いは、30年以上50年未満の1項事業用定期借地の場合には、以下を特約に定める必要があります。以下を特約に定めない場合、定期借地権としての効力が発生しませんので注意しましょう。

  • 更新がないこと
  • 建物の築造による期間の延長がないこと
  • 建物買取請求がないこと

 一方、10年以上30年未満の2項事業用定期借地の場合には、特約で定めなくとも、上記の効果が発生します。ちょっと難しい話になりますが、2項事業用定期借地の場合は、借地借家法23条の2項において、借地借家法第3条から第8条まで及び第18条の規定は適用しないと定められているからです。これによって、上記の特約を定めた場合と同じ効果があります。

公正証書について

 事業用定期借地は、一般定期借地権と異なり、公正証書による契約が必要です。公正証書の前に契約内容を確認する覚書を作成するケースもあるかもしれませんが、きちんと公正証書にしておかなければ、事業用定期借地契約は成立していませんので注意が必要です。

 公正証書の作成方法は、まず公証役場に連絡をして、地主と借地権者の間で合意した覚書などを公証人に送ります。公証人と文案などについて打ち合わせの後、日程調整をし、公証役場に赴いて公正証書を作成します。

地主と借地権者で決めておく条件について

 では、契約書にはどのようなことを定めれば良いのでしょうか。主な内容を挙げておきます。

  • 借地権の対象となる土地の概要(所在・地番・地目・地積など)
  • どのような事業に利用するのか(事業目的の建物所有である旨を明記)
  • 契約期間(10年以上50年未満の範囲内で明確に設定)
  • 地代(月額賃料・支払日・支払い方法の他、賃料が不相応になった場合に賃料の増減ができる旨など)
  • 権利金(契約時に一時金として地主に支払われる金銭のことで、契約終了後に返還する必要はありません。権利金は必須ではありません。)
  • 保証金(アパートを賃貸する際の敷金のようなものです。契約満了後、債務を控除した後返金します。)
  • 契約満了時の土地の返還について(土地の原状回復について・契約満了日までに明け渡さない場合の遅延損害金について・地主が建物の撤去などを行った場合の費用の請求についてなど)
  • 契約違反の場合の解除の規定
  • 土地を使用するにあたり禁止する事項について
  • 公正証書の作成などにかかる費用の負担について
  • トラブルが起きた場合の対応について(管轄裁判所など)

 上記以外にも、事業用定期借地の場合、当事者間の合意があれば問題ありませんが、途中での解約が認められるものではないため、中途解約に関する規定を定めておくことも良いかと思います。経営不振により途中で解約したい、建物が火災や災害で被害を受けて事業の存続が難しいなどの借地権者の要望もあるかと思います。一方で、地主からの解約は借地借家法の趣旨に反して、借地権者の利益を害することになりますから、地主からの中途解約の特約を設けても無効となると考えられます。

終わりに

 事業用借地は、土地を購入することなく事業をスタートできるため、新規事業開始時の初期費用を抑えることができます。一方で、契約期間終了後は、土地を返還しなければならず、その場所で事業を続けたいと考えても叶わないというリスクもあります。事業用借地は、新規事業や短期プロジェクトの事業には有効な選択肢であり、今後、土地活用の場面でも利用されていくかたちであると思います。メリット・デメリットを検討の上、うまく活用したいですね。

弊社では、不動産会社と士業事務所を併設しているメリットを活かして、事業用定期借地の公正証書作成をサポートしております。まずは、お気軽にご相談くださいね。

宅地建物取引士・行政書士・賃貸不動産経営管理士・FP2級など不動産に関する資格を複数保有。
不動産売買の女性営業として、チェーン店全国1位の契約件数をおさめるなど実績と経験を積む。
 よりお客さまに寄り添った、質の高い不動産サービスを提供するため、不動産売買専門の不動産会社(株式会社 SMILE HOME)と不動産に関する諸手続きや相続を専門に取り扱う行政書士事務所( 行政書士事務所SMILE OFFICE)を設立。不動産に関する情報をわかりやすく発信する活動にも力を入れている。

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