不動産を売却する時に必要となる登記済証や登記識別情報通知書。普段は眠っている書類のため、いざ必要となったときに見当たらない、どれか分からないという売主様からのご相談をよく受けます。今回は、一般的に「権利書」と呼んでいる書類が一体どの書類のことなのか、紛失したらどうすれば良いのかを解説します。
「権利書」とは何か?
私たちが普段「権利書(証)」と呼んでいる書類は、正式には「登記済権利証」または「登記識別情報通知書」という書類のことを指します。登記済権利証と登記識別情報通知書は、どちらも不動産の登記が完了した際に登記所から登記名義人に交付される書類です。「私がこの不動産の所有者ですよ」と他の人に示すための書類と思っていただければOKです。「登記済権利証」は、厚紙の表紙に薄い紙が綴じられているような一般的にみなさんがイメージするようないかにも重要そうな書類です。「登記識別情報通知書」は、緑色のA4サイズの紙の下の方(登記識別情報が記載された箇所)に、目隠しシールが貼られていたり折込方式により情報がかくされた状態になっている書類です。このどちらかが売主様がお持ちの権利書ということになりますが、どちらを権利書として持っているかは、登記をした時期によります。具体的に見ていきましょう。
登記済権利証と登記識別情報通知書の境はいつ?
この境は、実は登記所によって異なります。平成16年6月に不動産登記法の改正があり、平成17年3月の施行されました。この法改正により、これまでの書面申請に加えて、不動産登記のオンライン申請が導入されています。従来の登記済証では、オンライン申請に対応できないため、オンライン申請に対応するために、現在の登記識別情報通知書へと切り替わっていったんですね。ただし、一斉に登記識別情報通知書に切り替わったのではなく、オンライン庁に指定された登記所から順次登記識別情報へ切り替わっています。
弊社のメインエリアである宗像市・福津市を管轄する福間出張所は、オンライン指定日が平成18年5月29日ですので、それ以降は登記識別情報となります。全ての登記所がオンライン庁となったのは平成20年7月14日です。
平成17年頃〜平成20年頃に登記を行っている場合は、「登記済権利証」と「登記識別情報通知書」が混在している時期になりますね。
次は、実際にお手元にある書類から「登記済権利証」や「登記識別情報通知書」を探しだして、確認しましょう。
登記済証はコレです!
お手元の書類が画像のような「登記済権利証」だった方、登記済証や登記済権利証と書かれた表紙の書類を見つけて安心してはいけません。本当にそれは、現在効力のある「登記済権利証」でしょうか?不動産関係の書類って見慣れないものが多く、なんでもとりあえずとっておいて大量に書類があるという方も少なくないと思います。中には、「登記済権利証」が2つ出てきたなんて方もいらっしゃると思います。その場合、1つは空の権利書です。例えば、お父様から相続で不動産を取得された方の場合、お父様が不動産の所有者だった時の登記済証ということです。今は、あなたが不動産の所有者に変わっているため、同じ「登記済権利証」といってもお父様の時代のものは何の効力もありません。きちんとご自身のものか確認しましょう。ほとんどの場合は、表紙に物件名や所有者名が書いてあると思いますのですぐに分かると思います。私たち不動産屋さんは、確実に確認するために、受付印を確認しています。わからないときは、事前に不動産屋さんや司法書士の先生に見ていただければ安心ですね。
登記識別情報通知書はコレです!
お手元の書類が画像のような緑色の書類だった場合、それが「登記識別情報通知書」つまりあなたの権利書です。登記識別情報通知書の場合、その紙自体が重要というよりは、不動産及び登記名義人となった申請人ごとに割り当てられた12桁のパスワード(登記識別情報)が重要な情報となります。
「緑色のシールをはがさないでくださいね」と司法書士の先生に言われたり、もらった書類が窓付き封筒に封入され物件情報だけ確認できる状態で綴じてあり、簡単に開けられなくなっていたりすると思います。これは、登記識別情報通知書の紙自体は盗まれなくても、パスワードを盗み見られてしまうと、権利書を盗まれたのと同じことになるからです。必要な時が来るまでは、開けないようにしましょう。
余談ですが、初期のころの目隠しシールは、完全に剥がれなくて12桁の登記識別情報が確認できないという問題が起きていたようです。平成21年10月以降に発行した登記識別情報通知書については、改良がなされて剥がれない問題は解決され、今では、さらに折込方式というものに変わっています。折込方式の切り替え時期は、登記所によって異なりますが、福間出張所は、平成27年6月1日より折込方式で発行されています。
権利書が見つからないときの対処法
ここまで権利書がどれなのかということをご紹介してきましたが、そもそも権利書をなくしたという売主様もいらっしゃるかと思います。権利書をなくしても再発行はされませんが、手続きができなくなるということはありませんのでご安心ください。そもそも権利書は、不動産売買の際に本人確認の手段として売主様からご提示いただくものです。そのため、他の方法で本人確認をとるということになります。
方法はいくつかありますが、不動産売買で一般的な方法は「資格者代理人による本人確認情報の提供の制度」を利用する方法です。かんたんに言うと、所有権移転を担当する司法書士の先生が本人確認を行い、登記官に適正な情報を提供することによって手続きを進める方法です。この場合、当然司法書士報酬が発生します。費用は、司法書士事務所によってそれぞれであったり、取引物件の価格によって設定されていたりするようです。一般的には5万円~10万円程度のようです。権利書はなくさないように大切に保管してくださいね。
まとめ
- 「権利書」と私たちが読んでいるものは、「登記済権利証」または「登記識別情報通知書」のことを指す
- 「登記済証権利証」なのか「登記識別情報通知書」なのかは、登記をした時期による
- 平成17年から平成20年の間は、「登記済証権利証」を発行する登記所と「登記識別情報通知書」を発行する登記所があった
- 「登記済権利書」が複数出てきた場合は、登記名義人の名前や受付印を確認して有効な登記済権利証を見極める
- 「登記識別情報通知書」のシールは不必要に剥がしてはいけない。
- 権利書を紛失した場合、不動産売買では「資格者代理人による本人確認情報の提供の制度」という方法を用いて本人確認することが多い
今回は、不動産売買の際に必要となる権利書を解説しました。私の場合、権利書が分からないという売主様は、とりあえずある書類をドサッと用意してもらって、お家にお邪魔して仕訳けてます。性格上なのか、職業病なのか、書類はきっちり仕訳けたいタイプです(;^ω^)不動産業も行政書士業も書類の山ですから・・・。売主様のお宅にお邪魔すると不動産の書類から保険の書類、病院の書類まで混在していることが多々ありますが、分からないし、捨てるの怖いし、仕方ないですよね。せっかくの機会なので、「捨ててOKな書類」と必要な書類に分けて、必要な書類はファイリングしておけば今後も安心なので売主様と一緒に仕分けてます。写真とか出てきちゃうと思い出話が始まるのは、大掃除と同じですが、まあそれもまたいいですね(笑)これを読んだみなさんもこんな時くらいしか書類を引っ張りださないと思うので、ぜひこの機会に整理整頓してみてくださいね。