不動産の登記名義人の氏名・住所の変更登記義務化!職権による住所変更登記もできる?!

令和8年4月1日から、不動産の登記名義人(所有者)の氏名・住所に変更があった場合、変更の日から2年以内に変更登記をすることが義務付けられます(不動産登記法第76条の5)。実務においては、住所変更がされていないケースが数多く見受けられます。中には、ご自身の登記上の住所がどこになっているかさえ把握していない方もいらっしゃるかもしれません。今回は、この住所等変更登記の義務化についてお話しします。

義務化の背景

住所等変更登記の義務化の背景には、「所有者不明土地」の問題があります。この所有者不明土地は九州の面積に匹敵するほどの規模とされ、深刻な社会問題となっています。所有者不明土地とは、「不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地」と「所有者が判明しても、その所在が不明で連絡がつかない土地」のことを言います。所有者が不明な土地は適切な管理がなされず、周辺の土地への悪影響を及ぼすだけでなく、土地の有効活用や不動産取引の妨げにもなっています。さらに、公共事業の実施にも支障をきたす可能性があります。

所有者不明土地の所有者を特定するには、膨大な時間と費用が必要です。今後、高齢化がさらに進展し、所有者の認知症や死亡により、この問題はより深刻化すると予想されます。このような背景から、「相続登記の義務化」および「住所等変更登記の義務化」が導入され、これまでの任意申請から義務化へと移行することになりました。

住所等変更登記の義務化と罰則

住所等変更登記の義務化の施行日は、令和8年4月1日です。施行日より前に、住所等に変更があった場合も、変更登記をしていない場合は義務化の対象となり、令和10年3月31日までに変更登記をする必要があります。(民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則第5条第7項)

正当な理由なく、変更登記申請を怠った場合には、5万円以下の過料の対象となります。(不動産登記法第164条第2項)。この過料ですが、登記官が変更登記がなされていないことを把握しても、直ちに裁判所へ過料通知を行うわけではなく、違反者に対して相当な期間を定めて義務の履行を催告したにもかかわらず、期間内に申請されない場合に限り過料が課されます。

正当な理由とは

では、変更登記申請をしない正当な理由とは、どのような理由でしょうか?これは、法務省のホームページに5つの例が挙げられています。これらに該当しない場合には、、個別の事案の具体的な事項に応じて判断されます。

(1) 検索用情報の申出又は会社法人等番号の登記がされているが、登記官の職権による住所等変更登記の手続がされていない場合

(2) 行政区画の変更等により所有権の登記名義人の住所に変更があった場合

(3) 住所等変更登記の義務を負う者自身に重病等の事情がある場合

(4) 住所等変更登記の義務を負う者がDV被害者等であり、その生命・身体に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合

(5) 住所等変更登記の義務を負う者が経済的に困窮しているために登記に要する費用を負担する能力がない場合

変更登記の方法

住所や氏名の変更登記は、ご自身で申請することもできますし、司法書士の先生に依頼することもできます。また、今回の住所等変更登記の義務化を受けて、所有者が変更登記の申請をしなくても、登記官が住基ネット情報を検索し、これに基づいて職権で登記を行う「スマート変更登記」が開始します。このスマート変更登記に先立って、令和7年4月21日からは、所有権の保存・移転等の登記の申請の際には、所有者の検索用情報を併せて申し出る(申請書に記載する)ことが必要になり、また、令和7年4月21日時点で既に所有者として登記簿に記録されている方についても、検索用情報を申し出ることができるようになります。この申出をしておけば、義務違反に問われることはなくなるという制度ですので利用したいですね。

具体的な申し出の方法は、長くなるので、今回は、法務局のリンクを貼っておきます。

検索用情報の申出について(職権による住所等変更登記関係)

ご自身で、すぐに住所変更登記申請をしたいという方は、以前ブログで方法をご紹介していますので参考にしてください。

「相続登記の義務化」も「住所等変更登記の義務化」も、なんだか難しそうですが、問題は放置すればするほど深刻化して、解決には時間も手間も費用もかかることになってしまいます。不安な場合は、お早めにお近くの専門家にご相談くださいね。

 

宅地建物取引士・行政書士・賃貸不動産経営管理士・FP2級など不動産に関する資格を複数保有。
不動産売買の女性営業として、チェーン店全国1位の契約件数をおさめるなど実績と経験を積む。
 よりお客さまに寄り添った、質の高い不動産サービスを提供するため、不動産売買専門の不動産会社(株式会社 SMILE HOME)と不動産に関する諸手続きや相続を専門に取り扱う行政書士事務所( 行政書士事務所SMILE OFFICE)を設立。不動産に関する情報をわかりやすく発信する活動にも力を入れている。

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